『カサブランカ』製作75周年
イングリッド・バーグマンの大ファンを自称するσ(-_-)ワタシ、今年が名画『カサブランカ』製作から75周年だという事は知っていたが、相変わらず、食えない日本の映画界…、国内での再上映のお話は無いようだ。
それこそ映画の都ハリウッドでは、数日間に限ってだがリバイバル上映もあり、昨年大ヒットした『ラ・ラ・ランド』の中ではリスペクト映像が随所に使われて、このコトはI.Bファンの間では度々話題にもなった。
まぁ、ファン心理の嫉(そね)みはともかく、今でこそ映画界の“金字塔”と言われる『カサブランカ』も、主演のバーグマン自身は、実は撮影当時、日々書き直される台本を手に、全く結末が見えない…と熱量の掛けようも無く、早く撮影が終わればいいのに…と思っていたと言う。だのに、いつも自分と『カサブランカ』を重ね合わされることには違和感しかない…と、あちこちで発言しているから笑える。
それよりも、文豪ヘミングウェイに“マリア役はバーグマン以外に有りえない!”と、原作者自らに主演オファーされた『誰が為に鐘は鳴る』の撮影を控え、心はとっくの昔に“マリア”へと飛んでいた。…と、これまた本人が自伝の中で明かしているので、どれだけ『カサブランカ』の“イルザ役”に熱が無かったかが分かる。
『カサブランカ』のクランクアップから2、3日で、髪もバッサリ切り落とし、短髪、クリンクリンのパーマ頭で『誰が為に鐘は鳴る』の撮影現場に乗り込んでいったそうだ。
『カサブランカ』の監督、マイケル・カーティスも、編集作業に入って、撮り直しが必要になったのでバーグマンを呼び戻したら「彼女はとても“イルザ”を再演できる顔では無かった…」と回想している。
ところが、バーグマンの代表作は?と問えば、今でも誰もが『カサブランカ』を挙げる。この75周年がハリウッドでイベント化されているのもその証で、世界的にそういう評価が付いて回る現状に、後年のバーグマンも『この前リバイバルで見たら、あれは“案外イイ”映画だった』とコメントするようになる。初めてそう言った時にドッとうけたので、後々、この話はバーグマンお気に入りのジョークになった。YouTubeなどで古いインタビュー番組を探すと、毎度のように『後で気づいたけど、あれは“案外イイ”映画だった、ワハハハハ!!』と、場内を沸かせている。
世間の評価と己の思いとは、存外こんなもので、私も個展などやると、いつも評価を集める作品が、自身の思いの外にあることを思い知らされる。それは、時々自分の適性すら見失わせるが、「全部ダメ!」と言われるのとは違って、妙な快感でもある。
先だっての父との2人展『傘と酉』(2017/10/24-28)でも、大概の関心は、古色掛けた写真の表現技法に集まったが、その中でも、自身“会心の作”とは違う“とりあえず…の一枚”に、「味がある」「この作品にこそ、この表現技法が生きている」「こういう景色を見て旅していたのねぇ~」などと、かなり感慨深げな言葉を寄せられて、本人的には≪あぁこっちですか…≫と言う思いにさせられた。
展示も終え、早2週間…。
礼状の発送もまだ完了していない中で、まずは嫁ぎ先の決まった作品たちを送り出す作業を進めているが、そんな折、ふと “とりあえず…の一枚” を眺めて思った。
≪今気づいたけど、これは“案外イイ…”。≫
バーグマンと私を重ねるのは、かなりおこがましいが…(笑)、熱量の無かった作品が、今になって良く見えてくるコトに、こんなバーグマンお気に入りのジョークを思い出してしまう。
そして、今夜もまた、私の部屋では 映画『カサブランカ』のDVDが流れている。
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