祈りの島めぐり、五島列島の旅 (8)
出航にざわめく漁船の音で目覚めた奈留島の朝は、雲ひとつ無い快晴だったが、見た目に反して蒸し暑く、この日もかなり暑くなる事を覚悟した方がよさそうであった。
旅館前でレンタカーの配車を待って、8時には島の南を目指して出発した。
火山から成る五島の島々は相変わらずアップダウンが多く、軽自動車は上り坂で実に非力だった。
上り坂にさしかかる度に減速するSの運転をみて、私はてっきり彼女がふざけているのだと思ったが、豈図らんや、大真面目に目一杯のアクセルを踏んでいる。それでも時速20kmを下回る現実に驚いてしまった。
以後、上り坂ではクーラーを弱めるか、完全に止めてしまうかするのが、助手席に座った私の役割となった。
この日、奈留島観光には正味4時間を充てていた。
リストアップした見所は3つの教会を含めて5箇所。これぐらい時間があれば十分だろうと、12:50の船で奈留を去る旅程を立てていた。
移動手段が船しかない五島の島巡りで、時間厳守は必定。クーラーを止めてでも、とにかく疾駆することに傾注したのだった。
こうして到着したのが、舅ヶ島(しゅうとがしま)海岸だった。
≪変わった名前…≫と思った御仁も多いだろう。“姥捨て”的な謂れでも有るのかと思ったが、地名の由来をどんなに調べても、唯一“名前の由来は不明”という記載に行き当たっただけで分からなかった。
此処に限らず、五島には「はて?」と思わせる地名が時折登場して、正しく読むだけでも苦労したものだ。
さて…、そんな珍名の海岸には「千畳敷」と呼ばれる景勝地があった。



先にも別の島(嵯峨島-さがのしま)で「千畳敷」と名の付いた景勝地を見ていたが、“畳が千枚も敷ける”という語義どおりのだだっ広さでは、この奈留島の千畳敷が正に“言いえて妙”であった。
何しろ、驚くほど直線的且つ平坦な岩棚が、海中に浮かぶ小島まで連なっているのである。
〔写真左から:舅ヶ島海岸から向かいの小島まで連なる千畳敷を遠望/千畳敷の平坦な大岩/大岩までもが十字を切る?!祈りの島らしい千畳敷(笑)/大地のような岩棚に、ヒビ割れと隆起した筋が入る不思議〕



海は素晴らしく澄み渡り、真っ青に輝く小魚の群れが見える。あまりの美しさに、思わず崖の突端までにじり寄って見下ろしたが、後日、写真で見るとかなりキワドイところに居たものだ…。
そんな視線の先には、プカプカと烏賊が泳ぎ、見る目を楽しませてくれた。
ところで、ふと視界を海全般に広げてみると、海底に沈んでいる岩々が、あたかも古代ローマ遺跡の倒壊した円柱のように見えてくるのである。(写真3枚目)
ひと度そう見えてしまうと、もはや千畳敷の平坦な岩棚も、そしてそこいら中に転がる岩の一つ一つまでもが、人為的な建造物の残骸…、とりわけ古代神殿の柱頭飾りのように見えてくるから不思議だった。(写真4枚目)
結局、どんなに斬新なフォルムの人造物であっても、また古の遺構であっても、人の発想というのは土台、自然の造形の中からしか生まれないと言う事だろうか…。
嵯峨島の千畳敷もそうであったが、火山岩が生み出す五島の海岸の奇観は、居ようと思えば一日中散策していられそうで、つくづく、タイムリミットの無い旅をしたいものだと思うのだった。
そんなことを考えながら、大岩を登ったり降りたりしているSに「そろそろ次へ…」と声を掛け、再び舅ヶ島海岸へと戻った。
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コメント
ぜんそくは つらいですね。
娘が小さい時、冬の夜中に窓を開けたりして、大変だった覚えが・・。
どうか 呉々も お大事になさって下さい。
それにしても この千畳敷は 本物ですね。
私も どこかで こういう名前の場所を 見たことがありますが
内心”千畳は ないよねー”って 思ってました。でも、ここは あるでしょう?!
それに この海の きれいさ、静けさ、古代を想像したくなるような 雰囲気・・
こんな所に住んでいたら 人生観が変わりそう・・。
タイムリミットのない旅・・永遠の憧れですねえ。
投稿: むーたん | 2009年11月21日 (土) 10時33分
いやぁ(^^ゞ、こちらにも登場させていただきました。
毎晩更新を楽しみにのぞかせていただいております。
それにしてもYonatanの記憶力、想像力、感受性、学習、そして言うまでも無く写真・・・ほんとスゴイです。
一緒にいたはずの私、恥ずかしながらまるでそこに居なかったかのように、感心しながら読ませていただいてます。
昨夜アルジェリアから帰国しローマ遺跡を見まくった直後の私でも、千畳敷の写真は古代遺跡に見えますね。
海中の岩を見ながら「パムッカレの遺跡プールみたい」って言ってたっけ。
続きを楽しみにしています(^_-)-☆
くれぐれもお体ご自愛ください。。。。。
投稿: 登場人物、Sです(笑) | 2009年11月26日 (木) 00時30分
むーたんさん、すっかり返信遅くなって失礼しました。
体調にご心配頂き、恐れ入ります。
寒さが安定し、秋の花粉が落ち着いてしまえば、嘘のように元気になります。
有り難うございました。
さて、五島列島の海、空、共に私には美しすぎる…と思いましたが、地元の方々に言わせれば、随分汚れたそうです。
それも、中国の経済発展と共に…。
黄砂も年々凄いそうですが、大気汚染が酷いそうです。
防ぎようの無い大陸からの風、世界中の意識が同じベクトルへ向かわない限り、美しい自然は壊れるのみなのでしょうか。
喘息が厳しい折から、大気汚染には忌々しささえ覚える今日この頃です。
投稿: すとろん | 2009年12月 4日 (金) 04時07分
Sさん、ようやくのご登場ですね。
コメント、有り難うございました。
と言いつつ、返事が遅くなって失礼しました。
あの五島の日々は、思いのたけが未だにいっぱい詰まっておりまして、写真を見返しては、追体験をしております。
メモを取り、その日の内に旅程を振り返っていたSさんには感心していました。
あの五島の旅はノート一冊の物語に仕上がったんじゃないでしょうか?
私の旅の記録は常に視覚記憶です。
そのとき何を考えたか…、それを引っ張り出すのは3~4ヶ月がいいところで、この『祈りの島巡り』も、早く書き上げてしまわねば…と焦り始ています
投稿: すとろん | 2009年12月 4日 (金) 04時17分